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佐藤 哲也; 永目 諭一郎*
日本物理学会誌, 78(2), p.64 - 72, 2023/02
周期表の重い極限領域に位置する超重元素の化学研究は、ここ20年ほどで相当の進展をみており、最近ではさまざまなアイデアに基づいた新しいアプローチが展開されている。超重元素研究の発展には、日本の研究グループも顕著な貢献をしており、最近では原子番号が100を超える重アクチノイドから、超アクチノイド元素である104番元素ラザホージウム, 105番元素ドブニウム、および106番元素シーボーギウムについて、特筆すべき成果が報告された。本レビューでは、最近の主な成果を概説し、今後の展望についても触れる。
阿部 徹*; 平野 史生; 三原 守弘; 本田 明
原子力バックエンド研究(CD-ROM), 27(1), p.3 - 11, 2020/06
硝酸イオン化学的変遷挙動評価モデル(NEON)は、地層処分施設およびその周辺における硝酸イオンの化学的変遷挙動を把握するために開発された評価ツールである。硝酸イオンはTRU廃棄物に易溶性の塩として含まれており、放射性物質の移行挙動に影響を及ぼす可能性がある。したがって、地層処分の安全性を評価するための基礎情報として硝酸イオンの化学形態の変化を評価する必要がある。NEONでは硝酸イオンと、金属,鉱物および微生物との反応がモデル化されており、このうち微生物との反応は微生物の活動による窒素循環等の過程を取り入れて構築している。各反応モデルは室内実験の結果と比較され、おおむね再現できることが確認されている。そこで、TRU廃棄物の地層処分を想定したスケールにおけるNEONの適用性を評価することを目的として、地下水の硝酸性窒素汚染の天然事例について再現解析を実施し、モデルの適用性を評価した。再現解析には広島県生口島の事例を取り上げた。NEONを用いて計算された硝酸イオンおよびその化学変遷物であるアンモニウムイオンの濃度分布は、数百メートル規模でおおむね再現しており、NEONの広域的条件における適用性が示された。
園田 哲*; 片山 一郎*; 和田 道治*; 飯村 秀紀; Sonnenschein, V.*; 飯村 俊*; 高峰 愛子*; Rosenbusch, M.*; 小島 隆夫*; Ahn, D. S.*; et al.
Progress of Theoretical and Experimental Physics (Internet), 2019(11), p.113D02_1 - 113D02_12, 2019/11
被引用回数:1 パーセンタイル:11.61(Physics, Multidisciplinary)理化学研究所の不安定核ビーム施設(RIBF)では、入射核破砕反応や核分裂で生成される多くの核種からインフライト分離装置(BigRIPS)を用いて実験対象の核種を分離している。しかるに、分離された残りの核反応生成物の中にも核構造から興味深い多くの不安定核が含まれている。これらをBigRIPSから取り出して研究することができれば、RIBFの有効利用につながる。そこで、BigRIPS内に設置したガスセル中で核反応生成物を停止させてレーザーでイオン化して引き出す装置(PALIS)を開発中である。開発の一環として、RIBFのKrビームの破砕反応により生成するSe近傍の不安定核をガスセル中で停止させる実験を行なった。実験結果は破砕反応の模型計算の予測とよく一致し、ガスセル中での停止効率は約30%と評価された。この結果を基に、次のステップとして、停止した核反応生成物をガスセルから引き出すことを行う。
佐藤 哲也
化学と工業, 72(10), P. 867, 2019/10
価電子の束縛エネルギーを直接反映する第一イオン化エネルギー(IP)を実験的に求めることで、Z100の重アクチノイド元素の電子配置に関する情報を得ることを試みた。実験には、表面電離イオン化と質量分離を組み合わせたオンライン同位体分離器(ISOL)を用いた。重イオン核反応によって合成したFm(半減期2.6分)、Md(4.27分)、No(24.5秒)およびLr(27秒)をイオン化・分離して、各同位体のイオン化効率を測定し、対象元素のIPを決定した。この結果、原子番号の増加と共に、NoまでIPは単調に増加し、Lrで急激に小さくなる傾向を観測した。これは、5f軌道に順に電子が充填され、Noで準閉殻構造[Rn]7s5fをとり、Lrでゆるく束縛された1個の電子を最外殻軌道にもつことに対応する。この構造はランタノイド系列と類似することから、Lrでアクチノイド系列が終わることを初めて実験的に示すことができた。
若井田 育夫; 長谷川 秀一*; 田所 孝広*
日本機械学会誌, 122(1211), p.18 - 20, 2019/10
廃炉国際ワークショップ(FDR 2019) Track4での議論について概説した。放射線計測分野では、耐放射線性を意識した検出素子・検出機器開発、プラントモニタリングへの適用、そして廃炉作業現場で、まず最初に不可欠となる放射線源(汚染源)の可視化(イメージング)技術に関する議論が展開された。検出素子や周辺機器の耐放射線性が確実に進展していること、可視化技術が実用レベルにある状況が報告される一方、その基本が単一フォトン検出手法の領域にあり、高放射線場における高カウントレート核種同定の困難さが改めて認識された。今後の重要課題といえる。レーザー利用計測分野については、特定元素・同位体の選択的共鳴励起・イオン化による質量分析手法の高度化技術と、遠隔その場分析を可能とするLaser Induced Breakdown Spectroscopy(LIBS)等の発光分光技術に関する議論等が展開された。新奇で革新的な手法への挑戦よりも、これまで構築してきた手法を基本とし、その確実性に着眼する方向性が見られ、レーザー分析で重要となる光源の改善検討も含め、実現に向けた取り組みが問われていることが理解できる。
佐藤 哲也; 浅井 雅人; Borschevsky, A.*; Beerwerth, R.*; 金谷 佑亮*; 牧井 宏之; 水飼 秋菜*; 永目 諭一郎; 長 明彦; 豊嶋 厚史; et al.
Journal of the American Chemical Society, 140(44), p.14609 - 14613, 2018/11
被引用回数:27 パーセンタイル:69.46(Chemistry, Multidisciplinary)第一イオン化エネルギー(IP)は、原子の価電子軌道に関する情報を与える。99番元素アインスタイニウムよりも重いアクチノイドのIPは、一度に一つの原子しか扱うことのできない実験の難しさから、これまでに実験的に測定された例はなかった。我々は表面電離法を応用した新しい測定手法により、103番元素ローレンシウム(Lr)のIP測定に成功し、Lrが弱く束縛された最外殻電子をもつことを強く示唆する結果を得た。一方、Lrとは対象的に、102番元素ノーベリウムは充填された5f軌道および7s軌道をもつために、アクチノイド中最高のIPをもつと考えられている。表面電離法によるIP決定法をNoおよび100番元素フェルミウム, 101番元素メンデレビウムに適用することにより求められた各IPから、5f軌道への電子の充填に伴ってIPが単調に増加し、Noで最も大きくなることを確かめることができた。このことから、f軌道に電子が充填され、アクチノイド系列がLrで終わることを実験的に確かめた。
園田 哲*; 飯村 秀紀; Reponen, M.*; 和田 道治*; 片山 一郎*; Sonnenschein, V.*; 高松 峻英*; 富田 英生*; 小島 隆夫*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 877, p.118 - 123, 2018/01
被引用回数:4 パーセンタイル:38.58(Instruments & Instrumentation)理化学研究所の不安定核ビーム施設(RIBF)では、低エネルギー(~40keV)の不安定核イオンビームを生成するために、レーザーイオン源(PALIS)を建設中である。このイオン源は、Arガス中に捕獲された不安定核の中性原子に、波長の異なる2本のレーザービームを照射し、不安定核原子を2段階で共鳴イオン化する。しかるに、レーザー装置とイオン源は約70m離れており、しかも実験中は放射線強度が高いためにイオン源周辺に近づけない。そこで、レーザービームを長距離輸送する、遠隔操作が可能な光学システムを開発した。開発したシステムを試験した結果、レーザービームの位置は安定しており、紫外域で50%程度の輸送効率があることから、不安定核の実験に有用であることが確認された。
佐藤 哲也; 浅井 雅人; Borschevsky, A.*; Stora, T.*; 佐藤 望*; 金谷 佑亮; 塚田 和明; Dllmann, C. E.*; Eberhardt, K.*; Eliav, E.*; et al.
EPJ Web of Conferences, 131, p.05001_1 - 05001_6, 2016/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0.9(Chemistry, Inorganic & Nuclear)表面電離イオン化過程におけるイオン化効率は、対象原子の第一イオン化エネルギーに依存することが知られており、この関係を利用することで、イオン化エネルギーを決定することができる。新たに開発したガスジェット結合型表面電離イオン源を用いて、低生成断面積・短寿命のためにイオン化エネルギーが測定されていない重アクチノイド元素フェルミウム, アインスタイニウム, ノーベリウムそしてローレンシウムのイオン化効率を測定することにより、これらの第一イオン化エネルギーを初めて実験的に決定したので報告する。
佐藤 哲也
原子核研究, 61(1), p.96 - 106, 2016/09
103番元素ローレンシウム(Lr)の第一イオン化エネルギーを測定することによって、Lrがアクチノイド最後の元素であることを初めて実験的に証明した。その結果は、化学的性質を特徴付ける基底状態の電子配置が周期表からの予想と異なることを強く示唆するものだった。新たに開発した実験手法について解説するとともに、発表後の反響についても紹介する。
佐藤 哲也
化学, 71(3), p.12 - 16, 2016/03
103番元素ローレンシウムの第一イオン化エネルギー測定の結果、我々はローレンシウムがアクチノイド最後の元素であることを初めて実験的に証明した。その一方、得られた実験結果から推測される電子配置からは、ローレンシウムは13族に類似した最外殻電子軌道をもつことが示唆された。本研究により、ローレンシウムとルテチウムの周期表における位置に関する議論が再燃した。一連の研究成果とその後の議論について、解説する。
板倉 隆二; 伏谷 瑞穂*; 菱川 明栄*; 佐甲 徳栄*
AIP Conference Proceedings 1702, p.090021_1 - 090021_4, 2015/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Applied)超高速多チャンネル光イオン化によって生成したイオンのコヒーレントダイナミクスについて光電子-光イオン相関の観点から理論的に調べた。Arの1光子イオン化に対するモデル計算から、9fsのパルス幅を持つフーリエ限界極端紫外パルスによってイオン化した場合、イオンをモニターしただけでもArのスピン軌道2準位(J=3/2および1/2)に関連したホールのコヒーレントダイナミクスが認識できることが分かった。一方、チャープパルスを用いた場合にはコヒーレンスは見えなくなる。チャープパルスによるイオン化の場合でも、光電子と光イオンの同時計測を行えば、ホールのコヒーレントダイナミクスは抽出できることが示された。
佐藤 哲也
Isotope News, (740), p.16 - 19, 2015/12
103番元素ローレンシウム(Lr)の第一イオン化エネルギーを測定することによって、Lrがアクチノイド最後の元素であることを初めて実験的に証明することができた。その結果は、化学的性質を特徴付ける基底状態の電子配置が周期表からの予想と異なることを強く示唆するものだった。
佐藤 哲也
日本原子力学会誌ATOMO, 57(11), p.741 - 744, 2015/11
103番元素ローレンシウムの第一イオン化エネルギー測定の結果、我々はローレンシウムがアクチノイド最後の元素であることを初めて実験的に証明した。その一方、得られた実験結果から推測される電子配置からは、ローレンシウムは13族に類似した最外殻電子軌道をもつことが示唆された。本研究により、ローレンシウムとルテチウムの周期表における位置に関する議論が再燃した。一連の研究成果とその後の議論について、解説する。
佐藤 哲也
放射化学, (32), p.34 - 41, 2015/09
表面電離イオン化過程におけるイオン化効率は、対象原子の第一イオン化エネルギーに依存することが知られており、この関係を利用することで、イオン化エネルギーを決定することができる。この手法は、低生成断面積・短寿命のためにイオン化エネルギーが測定されていない重アクチノイド元素ローレンシウム(Lr)の第一イオン化エネルギーを決定するために開発した。本手法について、詳しく解説する。
佐藤 哲也; 永目 諭一郎; 塚田 和明
化学と工業, 68(9), p.824 - 826, 2015/09
103番元素ローレンシウムの第一イオン化エネルギー測定の結果、我々はローレンシウムがアクチノイド最後の元素であることを初めて実験的に証明した。その一方、得られた実験結果から推測される電子配置からは、ローレンシウムは13族に類似した最外殻電子軌道をもつことが示唆された。本研究により、ローレンシウムとルテチウムの周期表における位置に関する議論が再燃した。一連の研究成果とその後の議論について、解説する。
佐藤 哲也
サイエンスポータル(インターネット), 3 Pages, 2015/07
103番元素ローレンシウム(Lr)のイオン化エネルギー測定に成功したとして、「103番元素が解く、周期表のパズル」というタイトルでプレスリリースを行なった。この成果は、Nature 2015年4月9日号(520号)に掲載され、同誌の「News & Views」で紹介されただけでなく、さらに同号の表紙を飾った。この成果を一般向けに解説するとともに、その後の反響について紹介する。
佐藤 哲也; 浅井 雅人; Borschevsky, A.*; Stora, T.*; 佐藤 望; 金谷 佑亮; 塚田 和明; Dllmann, Ch. E.*; Eberhardt, K.*; Eliav, E.*; et al.
Nature, 520(7546), p.209 - 211, 2015/04
被引用回数:107 パーセンタイル:97.49(Multidisciplinary Sciences)表面電離イオン化過程におけるイオン化効率は、対象原子の第一イオン化エネルギーに依存することが知られており、この関係を利用することで、イオン化エネルギーを決定することができる。ガスジェット結合型表面電離イオン源を用いて、低生成断面積・短寿命のためにイオン化エネルギーが測定されていない重アクチノイド元素ローレンシウム(Lr)のイオン化効率を測定することに成功した。希土類元素のイオン化効率測定により得られたイオン化エネルギーとイオン化効率の相関関係から、Lrの第一イオン化エネルギーを決定したので報告する。
板倉 隆二
強光子場の化学, p.52 - 57, 2015/03
強レーザー場中分子の解離性イオン化は、光電子放出、分子イオン内部の電子励起など複数の素過程が複雑に絡み合い、多様な反応チャンネルを持つ。各チャンネルへの反応経路の詳細を明らかにするため、(1)光電子放出(イオン化)過程と(2)その後の分子内電子励起過程を分離して理解することが重要である。本解説では、光電子・光イオン同時計数計測法を使って、強レーザー場中における解離性イオン化反応経路を明らかにした最近の成果を紹介する。
板倉 隆二; 伏谷 瑞穂*; 菱川 明栄*; 佐甲 徳栄*
Journal of Physics B; Atomic, Molecular and Optical Physics, 47(19), p.195602_1 - 195602_9, 2014/10
被引用回数:3 パーセンタイル:19.04(Optics)Arの超高速多チャンネル1光子イオン化の理論について光電子と光イオンの相関を組み入れたモデル計算を行った。イオン化にフーリエ限界レーザーパルスを用いた時には、スピン-軌道状態の重ね合わせによるArのコヒーレント空孔ダイナミクスが観測できるが、レーザーパルスをチャープするとイオンのコヒーレンスは劣化することが示された。我々は、チャープパルスの場合でも光イオンのダイナミクスを同時に生成した光イオンで標識化することでコヒーレントダイナミクスを回復させることができることを明らかにした。
森林 健悟; Lee, K.*; 香川 貴司*; Kim, D. E.*
Laser Physics, 16(2), p.322 - 324, 2006/02
被引用回数:1 パーセンタイル:7.24(Optics)多重内殻電離過程を用いた短パルス高強度X線の(1)強度,(2)パルス幅測定法の提案に関して講演を行う。(1)強度測定:高輝度短パルスX線源によるSi原子への照射の原子過程を取り扱った。電子がすべて電離した中空原子()と電子が1つだけ残っている多重内殻励起状態()から発生するX線数の比は、照射X線源のパルス幅にほとんど依存せず、その強度のみに依存することがわかった。これにより、多重内殻電離状態から発生するX線が高輝度短パルスX線源の強度測定に利用できる可能性があることを示した。(2)パルス幅測定:2つの短パルスX線をtの時間間隔だけあけて照射し多重内殻励起からのX線数の計算を行った。多重内殻励起の生成は、多X線吸収、すなわち、X線非線形過程で生じることを用いて2つのX線パルスの重なりによるX線数の違いからパルス幅の測定ができる可能性を探った。この方法は、X線パルス幅よりも十分短い時定数の自動イオン化状態を持つ標的に対して有効であることが明らかとなった。